金市場、目先の手掛かり材料に一巡感 | ゴールドマーケット解説 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

先週(6月30日の週)の動き:NY金上半期25.7%、JPX金同15%の上昇 高まるFRBへの利下げ圧力

先週(6月30日の週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は反発した。週初に中東での停戦継続により地政学リスクが後退する中、関税交渉を巡るニュースで市場は楽観的な見方に傾き、地政学リスクの高まりの中で逃避資金を集めていたNY金は逆に売られた。

6月30日にはリスクオンセンチメントの高まりの中、米国株の主要指数S&P500種平均株価とナスダック総合指数が最高値を更新する一方で、NY金は一時3,250.50ドルまで売り込まれ、1ヶ月ぶりの安値をつけた。

ただし、売り一巡後はちょうど上院にて審議されていた大型減税・歳出法案が成立するとの見方から、財政赤字拡大を懸念して米ドル安が進行したことで、買戻しの動きが活発化した。7月3日までの3営業日はいずれも3,370ドル台が高値となった。

総じて堅調さ示した米労働市場

折しも先週は雇用動態調査(求人件数)やADP全米雇用報告(民間雇用)、そして労働省発表の雇用統計と米労働市場のデータが連日にわたり公表された。民間雇用が予想外に悪化したものの、総合的には米雇用の堅調さが確認された。FRB(米連邦準備制度理事会)による早期の利下げ観測は後退することになったが、主要通貨に対する米ドル安は予想外に進行した。

トランプ米大統領によるFRBへの利下げ圧力

というのも、市場でのマクロデータを背景にした早期利下げ観測後退の一方で、トランプ米大統領はむしろパウエルFRB議長に対し利下げ圧力を高めたことがある。トランプ米大統領は6月30日、パウエル議長に対し世界各国・地域の金利一覧を送付し、利下げを求めていた。自身のSNSトゥルース・ソーシャルにパウエル議長と「FRB全員は恥を知るべきだ」と投稿し、「われわれが支払う金利は1%以下であるべきだ!」と書き込んだ。足元の米政策金利は4.25~4.50%だが、3%ポイント以上の利下げ余地があるとする。

予想を上回った6月米雇用増

こうした中で米ドル安の流れは対ユーロで際立ち7月1日には一時1.183ドルまで売られ、終値ベースでは2004年以来となる9営業日連続安となった。7月4日が米独立記念日の祝日になることから7月3日に発表された6月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が14万7000人増加した。市場予想は11万人の増加だった。5月分も当初の13万9000人増から14万4000人増に上方修正された。失業率は4.3%に悪化と予想されていたが、実際は4.1%と、前月の4.2%から改善した。

結果判明と共に金融市場では米国債が売られ利回りは急伸、あわせて主要通貨に対し米ドルも上昇した。7月1日には2022年2月以来3年4ヶ月ぶりの安値水準(96.377)まで売られていたドル指数(DXY)は反発した。発表前には悪化予想から買われていたNY金だったが、売り優勢に転じ、上げ幅を20ドルほど失い3,342.90ドルで3連休前の取引を終了した。

NY金2ヶ月連続の下げ、上半期676.70ドル25.7%の大幅上昇

結局NY金の週足は、前週末比55.30ドル1.68%の上昇で2週続落後の反発となった。レンジは3,250.50~3,376.90ドルで値幅は126.40ドルとほぼ前週並み(147.30ドル)だった。なお6月のNY金は月間で7.70ドル(0.2%)の下落となり2ヶ月連続の下げとなった。四半期ベースでは157.40ドル(5%)の上昇、上半期では676.70ドル25.7%の大幅上昇となった。

JPX金4ヶ月連続の上昇、上半期2006円15%の上昇

一方、国内金価格はNY金の上昇を映すとともに、週末にかけて米ドル/円が1円程度円安方向に動いたことから、前週末比反発となった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は前週末比246円1.6%高の反発だった。

6月は月間で34円0.22%の上昇ながら4ヶ月連続の上昇、四半期ベースでは378円2.5%の上昇に、上半期では2,006円15%の上昇となった。上半期NY金との上昇率の違いは、この間に13.17円8.38%円高が進んだことによる(FactSet)。

6月米雇用統計:ヘッドラインの数字は好調も民間雇用の伸び鈍化

前述のように6月米雇用統計は予想外に市場予想を上回る結果となった。非農業部門雇用者数は11万人増の市場予想に対し14万7000人増加した。ただし、雇用者増加数のほぼ半分は政府部門によるものだった。増加数14万7000人のうち7万3000人が政府部門だった。州政府の教育部門の4万人増が中心で学年末の季節的要因によるものとの指摘がある。

民間セクターは7万4000人増加したものの、2024年10月以来の小幅な伸びにとどまり、過去3ヶ月の増加数の月平均である11万5000人増も下回った。前日7月2日に発表されたADP全米雇用調査報告では、民間雇用が前月比3万3000人減と2023年3月以来2年超ぶりのマイナスになっていたことと、整合的な数字となった。

製造業や小売業などの業種が強硬な関税政策に対処する中、民間セクターの伸びが大幅に鈍化していることがうかがえる。ただし、ヘッドラインの数字は米労働市場が底堅さを維持していることが示唆されたことで、7月会合でのFRBの利下げ観測は後退し、市場の大勢を占めている9月利下げ観測が裏付けられたと言える。ただし、民間雇用の伸び鈍化は頭に入れておきたい。

今週(7月7日の週)の見通し:トランプ米大統領による各国・地域への書簡の内容と反応、9日(水)6月FOMC議事要旨に注目 NY金は3,300ドル±50ドル、JPX金1万5500円±300円のレンジ

関税適用は実質的に再延期、不透明要因は残る

主要な米経済指標の発表がない今週は、まず7月9日に各国・地域に対する上乗せ関税に関する90日間の猶予期間が終了する。ここまでトランプ政権は対インドはじめ複数の合意が間近に迫っているとしてきたが、これまでに発表されたのは英国との限定的な枠組みの合意とベトナムとのディールを取りまとめたというトランプ米大統領の短い説明だけとなっている。中国とのレア・アース(希少金属)を中心とした貿易枠組み合意に関する最終的な理解の取りまとめは、米株式市場ではリスクオンセンチメントを高め高値追いにつながったが、これを含めても3件のみとなっている。7月9日を通過することで一定の不確実性は後退との期待は消えている。

トランプ米大統領は7月7日に各国・地域への関税通知の送付を開始し、関税率は最大70%、発動は8月1日とした。これに対しベッセント米財務長官は「書簡を受け取った国・地域にとって、関税率の適用は8月1日からなので、合意に近づいていない国が譲歩案を提示する時間はなおある」と述べたと伝わる。つまり実質的に再延期ということになり、不透明要因は残ることになる。今後も進行状況に伴い多少の波乱はあれ、市場にも一定の慣れ(織り込み)が生まれており当面は手掛かり材料にはなりにくい。一方、先週末7月4日には3兆4000億ドル(約491兆円)規模の大型減税・歳出法案が成立しており法案を巡る財政赤字拡大懸念については一巡感がある。

7月9日(水)、6月FOMCの議事要旨公開

注目材料としては7月9日(水)発表の6月FOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨がある。6月会合では2025年の経済成長率見通しを1.4%に下方修正する一方で、インフレ見通しは2025年末時点で3.0%と高止まりを示唆した。失業率は4.5%と予想。前回3月の予想は4.4%だった。総じてタカ派的と受け止められ、FRB内で政権が取る貿易政策のインフレへの懸念の高さを思わせた。7月29~30日のFOMC(連邦公開市場委員会)を控え、メンバー間のスタンスの違いなどにも注目したい。

関税合意期限が実質的に先送りされそうなことから、今週も方向感の出にくいレンジ相場が継続しそうだ。NY金は引き続き3,300ドルを挟み上下50ドルのレンジ。JPX金については1万5500円を挟み上下300円のレンジを想定している。

This page may contain third-party content, which is provided for information purposes only (not representations/warranties) and should not be considered as an endorsement of its views by Gate, nor as financial or professional advice. See Disclaimer for details.
  • 報酬
  • コメント
  • 共有
コメント
0/400
コメントなし
いつでもどこでも暗号資産取引
qrCode
スキャンしてGateアプリをダウンロード
コミュニティ
日本語
  • 简体中文
  • English
  • Tiếng Việt
  • 繁體中文
  • Español
  • Русский
  • Français (Afrique)
  • Português (Portugal)
  • Bahasa Indonesia
  • 日本語
  • بالعربية
  • Українська
  • Português (Brasil)